平成 29年度 保健医療用人工知能の技術革新と国際競争力向上に資する人材育成に関する研究

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 人工知能の研究開発が活発化するにつれ、医療用人工知能の開発のために大規模な予算が組まれ、国内外、大小問わず様々な組織で研究人材の育成が進められるようになりました。しかし、医療用人工知能の研究開発は、研究人材の欠如よりも研究プロジェクトを支える人材の欠如により多大な制約を課せられているのが現状です。

 たとえば、医療用人工知能 研究を進めるためには膨大な臨床データに正確な解釈を付与する研究協力者が必要となりますが、これは臨床研究の段階で協力する地域や施設において意思決定に関わる長の技術受容度により強く制約を受けます。そこで本研究では、医療用人工知能研究を支える3種類の人材を対象に、それぞれ効率的な育成プログラムを策定することで、研究分野の発展に寄与することを目的としました。

 まず、医療用人工知能 の導入意志決定に関わる人材の育成に向けて、医療機関や政策当局の理解促進に資する教材の開発を目指しました。そして応用分野を開拓していくため、医療の周辺領域の研究分野における人工知能活用について参入促進に向けた現況調査を図り、最後にデータ生成や構築システムの評価に関わる研究の生産性向上に資する人材育成の検討を目指しました。上記の達成のため、我々は、研究統括を含む10名3グループの研究班を形成し、平成30 年度からの本格的な活動に向けた準備を行いました。

 現在の我が国の医療用人工知能政策では、戦略的な研究開発投資が行われていません。医療用人工知能研究に際して、国内の各研究チームはそれぞれ個別に意思決定者への啓発を行うと共に、研究協力者の訓練を行わざるを得ず、非効率な競争を強いられています。研究助成の選択と集中は、研究の多様性を損ない、国際競争力を損なうという逆説的な状況を生じているため、本研究班は研究分野の多様化と各研究チームの研究効率の改善を図ると共に、医療用人工知能 に関する政策や臨床応用の医師決定者の啓発を目指しています。